レビュー

「エブリシング・バブルの崩壊」の衝撃

アマゾンで星4.5の高評価(2022.6.4時点)を獲得している話題の書「エブリシング・バブルの崩壊(著:エミン・ユルマズ)」で、特に筆者が印象に残ったポイントを要約・整理し、まとめてみました。

本書は、2022年3月25日発売とまだ2か月と少し前に出されたばかり。

「全てがバブル」というインパクトのあるタイトルが特に目を引きますが、著者はエミン・ユルマズ氏。トルコ出身、国際生物学オリンピック世界チャンピオン、東大→野村證券→複眼経済塾の取締役という輝かしい経歴を持つ。

年初からアメリカの株式市場を中心に世界的に荒れ模様。

米国株は3−5月頃から始まるという氏の本書内での予想はすでに的中しているから驚きだ。

しかし、エミン氏によるとバブル崩壊はまだまだこれからと警鐘を鳴らす。

インフレ、スタグフレーション懸念、ウクライナ戦争、中国経済の後退、仮想通貨の暴落など様々な不安が渦巻く中、特に投資に関わる方には読み応えのある衝撃的な内容となっています。

カメノヒコ

以降、ワシなりに気になった要素ごとにまとめてみた。

あくまで、一部分のごく簡易なまとめになっておるから、これを読んで気になった方はぜひ本書を手に取ってほしい。

とてもトルコ出身とは思えない語彙、読みやすさになっておるぞよ。

エブリシング・バブル

バブルの発生状況

◉株式市場の全セクター(IT、半導体、電気自動車、オルタナティブ・エネルギー、バイオテックなど)がバブル

◉GAFAの時価総額はバカバカしいレベル

バブル最終局面で見られる「メルトアップ現象(=通常では考えられない劇的な株高)」のフェーズ。

◉バブル期間:2008年のリーマンショック後から「FRB緩和バブル」開始

◉バブル規模:2000年のITバブルに近いが、規模が格段に大きい

バブル発生根拠(主なもの)

今の米国株価が半分でもまだまだ割高

◉S&P 500のPSRは適正1倍に対して約3倍
◉PSRが20倍超の企業の時価総額が2兆ドル超
◉PSR10倍超の企業が90社前後(ITバブル時は29社)

バフェット指数が200%以上

◉適正値は80%

IPO(新規公開株)の会社数が2021年に記録更新

◉ITバブル時を記録を塗り替えた

ガンマスクイーズ発生

◉コールオプション*がブーム
*決められた時期までに決められた価格で株を買う権利

◉ガンマスクイーズとは?
・オプションは現物株の10分の1などの価格で買える裏で、証券会社自身が株を購入

・つまり、オプションが買われるほど現物株が買われて価格上昇し、結果オプション価値がさらに高まる

・一方、株を売る権利を持つ人は損失が出るのでポジションをクローズ、結果売り圧力が減少し、さらにその株が上昇。するとさらに証券会社が株を買う

・こうした株価上昇の連鎖=ガンマスクイーズが現在起きている

ガンマスクイーズの破壊力
バブルを作ることも崩壊もできる金融大量破壊兵器

リーマンショック時の不動産担保証券投機と同じ

・ガンマスクイーズが逆回転し始めると大変

米国のすべての証券会社を含む金融機関、自己売買部門を持つ企業をガタガタにするパワーをもつ

・すでにアルケゴスが破綻。次はもっと大きい投資会社が破綻する可能性高い。

キャリートレードが全盛

◉キャリートレードとは?
・金利が低い通貨でお金を借りて、金利が高い通貨に投資すること

◉キャリートレードは必ずクラッシュ
・なぜならキャリートレードは経済の実力を無視した投資手法
・クラッシュすると投資家は追証がかかる→現金の価値が高まる→デフレが起きる
・米中経済のデカップリング(二国間の経済や市場が連動しないこと)で物価高が続くと、物価高での景気減速(スタグフレーション)に

米国不動産指数が2021年に20%も上昇

◉米国不動産もすでにバブル

現代版ねずみ講の仮想通貨やNFTの市場が拡大

◉仮想通貨、暗号資産もバブル

カメノヒコ

本書中に上がっていた主なバブルの要因を上記に挙げてみたぞよ。

特に怖いのが「ガンマスクイーズ」なるものじゃ。

実体の価値を超えるところで株価の上昇が積み上がってきたのじゃとすると、反対に実体の価値以上の株価の大下落が起きる可能性があるらしい。

もしこれが本当なんじゃとすると、ただただ肝が冷えるのぉT T

巨大バブルの崩壊

◉「メルトアップ」後には必ず「メルトダウン」が来る

◉今までに類を見ない「壮絶なバブル」の「グレート・クラッシュ」が起きる

◉バブル崩壊時期
・2022年3月頃からすでに崩壊開始
・バブルは最終的に受給悪化で崩れる

◉崩壊レベル
・今後30年間、高値更新できない
・下げと反発を繰り返しながら気づいた時にはひどい下げになる

◉2022年は相場は大きく荒れる
・インデックス買いは通用しない
・2021年末に自社株大量売却した(イーロン・マスク、マイクロソフトCEO等)
・記録的なSPAC上場数で相場の需給が極めて悪化(買い手不在)
・仮想通貨など新たな暗号資産が増加した

カメノヒコ

「30年間高値更新できない」ってやばすぎるにも程があるのぉ・・・

ワシゃあ、下手したら死んでおるわい笑

しかし、もし本当にこんなことになったら、インデックス投資でのFIRE的な生活を送っていくのは至難の業じゃのう

悪化する世界経済

金融市場発の世界経済悪化

◉本来、相場は経済の派生的立場で、経済あっての利益
◉しかし現在は金融危機が起きることで景気が悪くなっている
◉エコノミストやアナリストは各種マクロ指標分析よりFRB議長の発言分析ばかり

世界的インフレへ

ウクライナ戦争で物価高に

◉原油、天然ガス、小麦、アルミ・ニッケルなどが大きく上昇

景況感が悪いのになぜインフレ?

◉世界的な品不足
◉大企業による在庫の積み増し

インフレピークアウト近い

◉バルチック海運指数が大きく下がっている

が、インフレ率は長期高止まり

◉中国経済の明らかな減速(GDP)
◉個人消費が崩れ、インフレ圧力弱まり、コモディティは一部を除き下落に転じる
◉FRBがテーパリング終了を大急ぎで実施→相場がクラッシュ→さらに景気を大きく減速させる

◉1970年代のように物価高で景気は悪い時代に突入する

◉2020年の世界債務は対GDP比で256%
・第二次世界大戦前の290%が過去最大
・中国との戦争で世界中の生産と物流が途絶え、ハイパーインフレが起きる可能性も

中国→日本→米国の順で景気悪化

世界経済の先行指数は中国

◉中国は製造業中心、輸出中心の経済のため
◉中国は世界で良くなるのも、悪くなるのも最初
・コロナショックでも一番先に景気や株が悪くなり、良くなったのも中国
◉中国景気の下向きは確実
・不動産バブルが崩壊
・中国株下落
・すでに世界に先行して「利下げ」を実施
・これに続くのが日本。そして、アメリカへ

・コロナショックでも一番先に景気や株が悪くなり、良くなったのも中国

日本は世界経済の一致指数

◉日本は製造業とサービス業がミックスしているため

アメリカは世界経済の遅行指数

◉米国の製造業はGDPの1割以下。経済サイクルの最後は小売や個人消費。
◉アメリカは良くなるのも悪くなるのも最後

カメノヒコ

中国はたしかに色々と大きく崩れ出している感覚はワシもあるのぉ・・・

この通りだとすると、日本とアメリカはさらに崩れてしまうのか・・・

第三次世界大戦は実質的にもう始まっている

習近平は台湾併合を絶対にやり遂げたい

◉中国が台湾侵攻時は、米・日・豪・英が連合軍を結成して戦争

必ず日本も前線になる。米軍基地が狙われる。

◉日本人は危機感が不足。中国が日本に上陸してからでは手遅れ

カメノヒコ

日本が戦場になるだなんて、恐怖しかないわい!

危機感といっても、具体的にどうしたらええのかの絵が描けんわい・・・

日本政府は頼りないから、国外脱出でもするかの

変わりゆく中国

中国不動産バブルはとっくに崩壊

◉すでにデフォルトした不動産関連会社は驚くほど多い

◉ナンバー2の恒大集団も実質デフォルトしている

◉長期にわたってバブル崩壊する可能性が高い

◉中国の不動産市場は今後30年間動かないかも

◉中国からお金が抜けるので日本には中長期で追い風

中国の「失われた半世紀」が始まる

◉資本主義に近い現在の中国では貧富の差が拡大

◉貧しい層の支持を取り付けるために中国政府は社会主義に戻す

◉巨大テック企業や民間企業、外資系企業から資本が取り上げられる

◉結果、共産党支配を盤石にする一方で、中国経済は長期で低迷する

中国は「習近平ワールド」

◉習近平は、一部のエリート以外は労働者として黙々と働いてほしい

◉中国の子供は世界の多様な価値観に接する機会を失い始めている

◉学校では「習近平思想」が必修化。英語教育が大幅縮小。

◉アリババのジャック・マーのようなグローバリストの立場は厳しい

◉中国への投資は急減する。そのうち中国企業は米国で上場できなくなる。

◉反対に日本への拡大投資につながる

カメノヒコ

中国が今の姿からは大きく形を変える。

それはつまり、世界の姿が大きく変わるということと同じじゃ。

ワシは、習近平とプーチンからは「同じにおい」を感じるから、想像を超えるような恐怖が起きる気がしてならんのじゃ

日本はデフレからインフレへ

日銀はいずれ利上げ

◉物価上昇から日銀に政治的圧力がかかる

◉世界各国の中央銀行も軒並み利上げ

インフレで債務縮小?

戦後日本はハイパーインフレで債務縮小

◉1944年度の日本の対GDP債務残高は204%

◉敗戦後のインフレで日本の借金は一気に縮小

◉物不足でハイパーインフレになり、現金は紙屑

日本のサイクルは70年

◉2020年の債務残高は対GDP比256%先進国中「断とつ」の高さ

意図的にハイパーインフレを起こし、借金縮小の可能性も

カメノヒコ

戦後にハイパーインフレ+現金紙屑を起こした時の債務残高の対GDP比率より今の方が高いというのは、ヤバくないのじゃろうか・・・?

これから日本の人口減少も加速して税収減少は免れん。

少なくとも日本円での資産保有はリスキーそうじゃの。

インフレ対策

現物資産

不動産、金、株等の保有

日本株の上昇期待

◉日本株は過去30年間低迷
◉エブリシング・バブル崩壊後、凄まじい額のお金が「質の高い日本」へ流入する
◉日本株は米国株ほど下げず、再度上がる
日本のバリュー株が伸びる

おすすめは日本株の積み立て

◉リスクの低い投資先アイデア
・現在割安の防衛関連株(三菱重工、川崎重工、IHI)
食料・飲料関連株
・半導体関連はサイクル的にとても割高なため今は手出ししないこと

アメリカ経済は転換期

80年周期で動く米国経済

1941-1980

◉1929年の大恐慌後にルーズベルト大統領は社会主義的な政策として大型公共投資や労働者の待遇改善を推進

◉富裕層のゴールドを没収してドルと交換させてドルを切り下げ

1982-2020

◉レーガノミクスにより、富裕層の税金や企業の法人税を削減

◉一方、労働者の権利は奪われた

◉結果、2008年以降貧富の差が拡大

◉金融緩和による低金利で効率の悪い大ゾンビ企業は助かり、より競争的優位に立てた

◉80年代まで禁止されていた自社株買いをゼロ金利で借りて企業は株高を演出

米国経済はリセッションへ

明らかな消費の息切れ

◉消費者信頼感指数が2011.11以来の低水準

下がる米国雇用の質

増えているのは配達員やドライバーなどパートタイマー
◉高い収入を期待できる仕事は縮小の一途

エブリシング・バブル崩壊後

◉大恐慌後と同様に、再度社会主義的なインフラ投資が推進される

カメノヒコ

アメリカで昔「ゴールドの没収」なんてことがあったのは驚きじゃ。

今のアメリカの尋常ではない貧富の差を解消するときには、何か他の手立てでも考えないと、ゴールドなんかでは大して効果はなさそうじゃのぉ。

仮想通貨はただの「ねずみ講」

通貨ではない

◉誰も決済手段として使っていない
◉ボラティリティが大きすぎる
◉海外送金はPayPalの方が簡単で割安

コモディティでもない

◉金属などように本源的な価値は何もない。
◉消そうと思えば簡単に消える

証券でもない

◉証券に似ているが、発行主体は将来キャッシュフローを全く生まない。ゼロ。
◉外部から投資家がドルなどの現金資産を持ってくるだけ

芸術・美術でもない

◉NFTはバブル末期の象徴的な動き
◉マネーロンダリングの可能性も

カジノや新興宗教、現代版ねずみ講のようなもの

◉熱烈に支援しているのは究極の自由、政府の力を極力削ぎ、なるべく税金も払いたくない極右勢力

◉ブロックチェーンでは過去の取引は改ざんできない。
つまり、盗まれた場合でも取り戻せない
ハッキングされた財産は取り戻せない
クレジットカードは不正取引は返ってくる。
中央当局がないことはそんなにいいこと?

カメノヒコ

仮に仮想通貨が砂上の楼閣だとしたら、これが崩れた時に世界はどえらいパニックに陥ることは間違いなかろう。

今や、大手の金融機関や著名投資家も購入しているばかりか、国の通貨として認めたところまであるからのう。

崩れた時のことを想像すると恐怖しかないわい。

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全体としていかがじゃったろうか?

わしは正直、これを読んだ日はちゃんと寝付けなかったくらい、衝撃の書じゃった笑

「かつてない規模のバブルの崩壊」

「30年間株価が低迷」

「日本が戦場になる」

「仮想通貨はただのバブル」などなど

FIREを目指している民にはもちろん、多くの人にとってもこりゃあ「地獄絵図」じゃ笑

しかしながら、「可能性の一つ」としては考えておいた方がええのぉ。

いやあ、ため息しか出んわい笑