ここ何年かで耳にする機会が増えてきた「発達障害」。
今回は「子供の発達障害」にフォーカスした書籍「子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと(著:本田秀夫)」をまとめてみました。
子供の発達障害に関する本は他にもありますが、NHKの人気テレビ番組「プロフェッショナル」でも特集されたベテラン医師による、2021年10月15日に発行された注目の書籍です。
お子さんが発達障害、あるいはその可能性があるという方にはもちろん、周囲に発達障害の児童がいる、発達障害に関心のある方にも、非常に役立つ内容となっています。
わしも身近に発達障害の子供がおるんじゃが、この本は日頃からの悩みに丁寧に対応してくれていて目からウロコじゃったわい!
でも気づくと忘れがちじゃから、バイブル的にいつでも手に取れるところにこの本を置いておるんじゃ
NHKで特集された超ベテラン医師
著者は本田秀夫というお医者さん。
本田秀夫
精神科医。医学博士。
1988年東京大学医学部医学科卒業。
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部長。
著作多数。
約20年もの長期間にわたり、現場で発達障害の子どもたちを診察してきた医者は日本では珍しいとのこと。
そして、なんと作者ご自身も発達障害の「グレー」とのこと。
以前の放送回になるが、NHKの「プロフェッショナル」の出演回も参考になったぞよ。
現場での長年の経験に加えて、作者自身が発達障害のグレーゾーンということだと、記述内容の説得力は高いのぉ
どんな人向けの本?
・発達障害 or 発達障害かもしれない幼児期から思春期までの子どもをもつ親
・発達障害の子どもの育て方や接し方に悩んでいる人
・発達障害の子どもにより幸せな人生を送ってもらいたいと考えている人
・発達障害の子どもの特徴
・発達障害の子どもを育てる上での基本的な考え方
・具体的な場面ごとの子どものほめ方、叱り方、接し方
発達障害とは
◉発達障害とは:自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などの障害をまとめた「総称」
個々の障害のざっくりの特徴は以下のとおり。
<自閉スペクトラム症(ASD)>
主な特性=「臨機応変な対人関係が苦手」「こだわりが強い」。
具体的には、場の空気が読めない、独特の言葉づかい、興味の範囲が狭い、手順やルールにこだわるなど。
<注意欠如・多動症(ADHD)>
具体的には、うっかりミスが多い、忘れ物をよくする、気が散りやすい、じっと座ってられない、思いつきでしゃべるなど。
<学習障害(LD)>
読み書き、計算が苦手
◉発達障害は「発達の特性があり、そのために生活上の支障をきたす状態」。
つまり、特性があっても生活に支障をきたしていなければ障害とは言えない。比較的順調に暮らしている人もいる。そのため、著者は本書内でASDをAS、ADHDをADHと最後の「D」(=Disorder、障害)を省いて用い、特性そのものへの処方箋を提供。
◉発達障害者のイメージとしては「少数派の種族」のようなもの。
◉上記に挙げた発達障害の各特性が単独で見られる場合もあれば、複数の特性が重複する場合もある。
◉特性を起因とした困難は軽減可能。自分なりの工夫やまわりの人のサポート、環境を調整するなど多くの対応法がある。ただし、軽減できても特性はなくならない。
◉なので、無理に自分を変えようとすると苦しくなる(=「過剰適応」)。「みんなと同じように」を要求することで人為的に不安やうつを生じさせる可能性もある。
◉近視と同じように対応すべき。近視の子がメガネをかけるのと同じように、発達障害の子の特性に合わせてやり方を変えたり、環境を調整する。
育て方の3つのポイント
★世間一般の基準に合わせることを求めて無理をさせてはいけない。
(1)グレーとは 白ではなくて 薄い黒
多数派に合わせない:特性は無くならないので、多数派の子どもたちと同じような行動を求めない
(2)「せめてこれくらい」はNGワード
平均値に合わせない:「平均」や「平均より少し低い出来」を求めない。特性に合った育て方に切り替える。
(3)「友達と仲良く」と言ってはいけない
友達に合わせない:無理に合わせると過剰適応で苦しくなる。声かけは「楽しんでおいで」。発達障害の子にとって「仲良く」は目的ではなく「結果」
いやあ、、、言うは易しで、実際はどこかで平均近くを求めてしまうし、友達と仲良くしてほしいとか思ってしまうもんじゃ。
だからこそ、日頃からこの辺りは注意しないといけんし、そのコツはこの後にも出てくるぞい!
必要な2つのスキル
(1)自律スキル
自分ができることで自律的に社会参加する
(2)ソーシャルスキル
人に合わせられないことがあっても、最低限のルールは守る
まとめると、
「人と違うことをやるべし!」ただし、「社会のルールはちゃんと守るべし!」
子どもがどんな大人になるかは育て方次第
「得意」「苦手」「好き」「嫌い」を知る
◉親や先生がありのままに「得意」「苦手」「好き」「嫌い」を知っていく。本人も知る。
「苦手なこと」「嫌なこと」から全力で逃げ回る
◉努力で困難を克服するという価値観を押し付けられると、達成できなかった時に自信を失ってしまう
◉苦しんで傷ついて自信を失うよりも、苦手なことはサポートしてもらって、得意なことや好きなことで活動を広げていく方がはるかに有意義
多数派向けの生活を少数派向けに調整
◉本人や周囲が特性を理解して「得意」や「好き」を発揮しやすい環境をつくると追い詰められて逃げ回ることは減り、能力も自尊心も育つ
ほめ方、叱り方
◉適切な褒め方、叱り方は子供のタイプによって異なる
◉子供は自分が変わりたいと思ったときに変わる。
親や周囲ができるのは、ほめたり、叱ったりしてサポートすること
下心なくほめる
◉たとえ常識から外れるようなことでも、子供が「やりたい」「楽しい」と感じていることを、そのまま認める
【例1】
大人がやらせたいと思っていることを成し遂げた時に「がんばったね」とほめる
<NG理由>
・「こう育ってほしい」という親の下心がある。子供に下心は伝わる。
プレッシャーをかけられて苦しいかもしれない。
次の課題を出されるかもといった重圧になる。
・「子供のやりたい」と「親のやらせたい」は違う
・親が下心を捨てて、子供のやりたいことに目を向けて、その子の「好き」や「興味」に素直に共感する
・子供をほめることは、その子のやりたいことをほめること
例)親子の共同作業で、親主導で進めた子供はあまり説明をしない。自分がやりたいことではないから、言いたいことが少なくなる。
一方、自分のアイデアが採用された子供は雄弁に説明する。
・子どもには自発的に伸びていく芽があり、それを見つけてそのまま伸ばすことが大事
【例2】
なんとなく「すごいね」と言う
→子供を喜ばせたいという下心がある
すごさがわからない時は下手にコメントせず「それは何?」と素直に聞く
【例3】
大げさにほめたり、無理におだてる
子どもにとっての達成感に共鳴するような形でサラッとほめる
*幼児期はどんどんほめる(後述)
【例4】
子供の理屈をこねたちょっと変わった話を注意する
まずは「なるほど」「面白いこと言うね」と受け止めるがほめることになる
ほめ方のヒント
◉ASD・ASの子供は計画的に進めたい傾向あり
→作業完了時にほめると本人の達成感に共感しやすい
◉遠回しな言い方が伝わらない場合あり
→具体的な言葉でしっかりほめる。例「長く並べたね」
◉気が散りやすい傾向あり
→作業の途中でもほめる
◉できていないことを無理にほめない
→結果オーライでできた時は「お騒がせするわりにはちゃんとやるよね」
「すごいね」とどんどんほめる
*「学童期」はあくまで目安。年齢ではなく子供の様子を見て決める
露骨なほめ方ではなく、さりげなくほめる。
ぼそっとつぶやくくらい。
(この頃になると大人にほめられるかどうかに関係なくやりたいことをやるため上記対応が望ましい)
叱るときのキーワードは「本気」
◉子どもに行動をあらためてもらうための方法を「本気」で考える
→叱るのがうまい人は、色々と考えた上でしかるのでめったに子供を叱らない
◉「せめてこれくらい」はNGワード
・子供が反省しない、子供にはこれぐらいやってほしい、は親の高望み・欲
・親は多くの場合、期待して少し高めのラインを設定しがち
✖️ 平均的なラインを望む → 高望み
✖️ これくらいはできてほしいラインを望む → これも高望み
◯ 子育てが楽になるラインまで下げる。OKレベルを下げる
→子供の努力を肯定的に捉える
◉子供は言葉だけで注意する人のことは真剣に聞かない
✖️ 急に走り出した時に声だけかけて注意する
◯ 自ら動いて体を張って止める
3種類の「叱る」
①大事なことを教えるため
②憂さ晴らしのため
③その場をおさめるため
◉子供に効果があるのは①だけ
教えようとしていることが子供の発達段階に合っていること。
合っていれば、数回言えば伝わる。
合っていなければ、行動につながらない。一度取り下げて親が手伝うなどの対応
◉②の憂さ晴らしは親都合。後で子どもに謝ること
◉③のその場をおさめる行為は相手の怒りを抑えるため。
別機会に適切な行動を「一般論」化して教える。
→ASDは記憶力が強い子がおり、反省しすぎることがあるため
叱り方のヒント
①「親戚の子を預かっている」と思う
叱りすぎずに済む距離感がつくれる
②年齢とともに叱る回数を減らす
③「肯定文」で言う
例)外へ出ちゃだめ→こっちへおいで
例)叩かないで→お口で話をして
例)やっちゃだめ→〇〇した方がかっこいいよ
④子供と取引しない
✖️ 「〇〇できたら、XXしてもいい」はNG
→〇〇できなかった場合の罰則になりやすい
⑤イタズラはスルーする
叱ると子供は面白がるので「叱らない」が一番
⑥危険なイタズラは体を張って止める
⑦子供をほめる機会を増やす
子供をほめるような関わり方を増やす
子供の能力が足りないことを叱ってはいけない
ケアレスミスも実力のうち。
課題を調整することでミスを減らし、学べるようにする。
場面別のポイント
<苦手なこと>
・「無理に」やらなくていい
・画一的なしつけや教育からは「全力で逃げる」
・自分なりのやり方で(例:人の力を借りる)
<身の回りのこと>
・後回しにすると生活力のない大人になる
・幼児期から教える
・勉強よりもずっと大事
生活力をつけさせてあげることがとにかく大事。いい気づきになったわい
気分や体調が良ければ衣替えしなくてもいい
放っておく。介入すると悪影響も。
自分のこと(食器を下げる、脱いだ服を片付ける)は本人にやらせる。
家族のことの手伝いはダメもとで頼む感じで、楽しい雰囲気の中で自信をつけさせる。将来的に「やろうとしてもやり方がわからない」を防ぐ。
ランドセルスペースなど作ってあげて片付けやすい環境をつくる
発達障害の子はやりたいことを減らすのが苦手
→日中にやりたいことができるようにする
→夜更かししていても、朝起きられて体調も良ければ問題なし
親子間でのルール決めのポイント
①親も子も納得できるルールであること
②場面ごとにルールが違ってもOK
③最初が肝心。変更しすぎはNG→混乱する
<対人関係>
・「友達と仲良く」はNGワード
多数派が大事というミスリードになる。
友達と盛り上がる環境をつくるなどの工夫で、結果として仲良くなる。
※仲良くなることを目的化しない
楽しめていればひとり遊びは問題なし
◉ゲームに夢中で食事に来ない
ゲームには勝てないので、妥協ポイントを探す。
ご飯まであと何分かを横まで行って予告する。
ゲームをそばで観察する。ポイントは本気度。
◉家でずっとゲーム
他の遊びに誘う。それに興味を持てば子供は続ける。
ただし、親がやらせたい下心で続けさせないこと。
◉ゲームの時間を守れない
ゲーム以外の楽しい活動を見つけていく
ゲームは鬼門じゃw
いろんなやり方を試しためしやっていかないと中毒になってしまうからの
SNSには思ったことをそのまま書くのではなく、どういう書き方なら相手に受け入れられやすいかを一緒に考える。
スマホでの夜ふかしは無理に制限しない。
宿題は百害あって一利なし
やりたければやる、でOK
宿題は一利なしというのにはびっくりしたわい。
というかこれはもっと早く知っておきたかった!
今までどれだけ苦労したことかw
やりたい子は勝手に勉強する
ASD:しばしばよく勉強する
ADHD:コツコツが苦手が多い。気分が乗ったときに一気に勉強する
無理に読書や音読はさせない
学習障害がある場合は、音声や映像で学べばいい
◉大原則「子供がやりたいことをやる」
◉「やめたい」と言ったらすっぱりやめる
✖️「一度決めたら最後までやりなさい」はNG
本当にやりたいことであればやる気は続く
習い事はこんなシンプルな考え方で良かったんじゃの!
やりたいことが見つかるまで色々試してみるのが良さそうじゃの
最後に
◉子育てのギアチェンジをして、子どもに合ったスピード、子どもに合った走り方で走る
◉すると、親子ともに楽になる
◉しかし、親が意識を変えるのはとても大変なこと
◉実践しながら効果を実感していく。徐々にやっていく
まとめた内容は、本書内の一部の例やエッセンスのみじゃ。
詳細が気になった方はぜひ本書を手にとっておくれ